コルク建材について
川口 士郎 (東亜コルク株式会社)「みなさん、コルクってご存知ですか?」と尋ねると、大多数の方からは「ああ、ワインの栓ですね。」と言う答えが返ってくるのではなかろうか。
そう、コルクが最も多く使われるのがワインやシャンペンの栓(コルクストッパー)です。コルクのほかの用途としては、コースター、 ソフトボールや硬球・ゴルフボールの芯材、卓球のラケット、靴底、釣竿、救命浮輪、エンジンのガスケット、そしてコルクタイルなどの床材や壁材として幅広く使用されています。
では、コルクは何から造られるのでしょうか?
実はコルクは、ブナ科の常緑高木である 「コルク樫」の樹皮から生産されます。このコルク樫はポルトガル、スペイン、南フランスや北アフリカなどの地中海に面した地域に群生しています。コルク樫は樹皮が非常に厚く育つ性質をもっており、生命力が強くて樹皮を剥いでもまた新しい樹皮が再生してくるので、親木を切らずにコルクを収穫できるのが特長です。
コルク樫は植林してから約20年余りで成木となり、その寿命は150年〜200年といわれ、1本の木で15回前後樹皮の収穫が行われます。最大の生産国であるポルトガルでは、最初に樹皮を剥がせる時期の幹の大きさや、2回目以降の樹皮の収穫は9年未満は禁止といったことが法律で定められています。
樹皮の収穫は6月から8月の夏に行われ、作業者は収穫専用の斧で樹皮に切り込みを入れ、柄の部分で抉じ開けるようにして樹皮を剥がしていきます。筆者も実際に斧を持ってやらせてもらったが、厚さ5cm程のクッション性のあるコルク層に切り込みを入れるのは大変な労力だと実感しました。
樹皮を剥がされた親木には西暦年の末尾の数字が白のペンキで書かれます。昨年に収穫した木には2007年の「7」が記され、次回にこの木の樹皮が剥がせるのは、コルク層が再生する9年目の2016年ということになります。

1回目に収穫された樹皮はバージンコルクと呼ばれゴツゴツとして非常に不ぞろいなため、炭化コルクの原料や園芸用の蘭の着床用に使用されます。2回目の収穫品も品質が安定せず、コルクストッパーとして利用出来るのは3回目以降の収穫品からです。
収穫されたコルクの樹皮は、数ヶ月間野積して天日乾燥させた後に、約90分間煮沸してタンニン等を抜き、板状のコルクバークとして等級分けをし取引されます。そしてこのコルクバークからワイン用のコルクストッパーが生産されます。
コルクストッパーを抜いたあとに出る大量の残材(コルクウエスト)は、集められて粒状に粉砕され、コルクタイルやロールコルク、リノリウムなどの建材をはじめとする、いろいろなコルク製品の原料として利用されます。

コルクタイルは、コルクチップを固めてタイル状にした床仕上げ材で、約100年前にアメリカで開発されました。
コルクタイルの一般的な製造方法は、ブロック方式です。コルクウエストを粉砕して出来たコルク粒を乾燥し、バインダーと混合して金型に入れ、加熱炉内にてバインダーを硬化させてコルクのブロックを造ります。ブロックは大雑把に見て250×630×940ぐらいの大きさです。加熱炉内でかける温度と時間によって、タイルの色調も変えることが出来ます。
出来上がったコルクブロックは養生後に必要な厚さ(3.2・4・5・7・10mm等)にスライスし、再養生した後に塗装工程にて表面を仕上げ、粗切り・正寸カット(300mm角)して床材としてのコルクタイルになります。
掲示板などに使用されるロールコルクは、ロール状に巻いた長尺のコルクシートで、円柱形状の金型でブロックを造り、ロータリーレースで桂剥きをして製造します。
断熱材として使用される炭化コルクは、最初に収穫されたバージンコルクを大粒のコルク粒に粉砕し、金型に入れて高温で焼成発泡させたもので、バインダーは一切使用せず樹皮から出る樹脂で固めます。焼成後のブロックには熱湯をかけて冷やし、2週間程養生してから、25、30、50mm等の厚みに切断して断熱ボードとして使用します。
また炭化コルクを再度粉砕して炭化コルク粒とし、タイル用と同じようにバインダーと混合してブロックを造り、スライスしてからサンダー仕上げ、寸法(150mm角程度)カットをしたものは、浴室洗い場用のタイルとしても使われています。冬場でも磁器タイルに比べてヒャッとせず、また滑りにくいという特長があります。
次にコルクの性質ですが、最大の特長はその構造にあります。
コルクには1m3あたり約4,200万個もの微細な気泡(独立気泡)が含まれており、このコルクの気泡構造がコルク特有のしなやかな弾力性や防振性を発揮し、保温性能や耐水性能をもたらしています。
コルクタイルで仕上げた部屋で、万が一転倒しても身体に伝わる衝撃をやさしく和らげたり、素足で歩いてもヒャッとした感覚がないのもこの微細な気泡の効果です。
ただコルクは木質材料でありながら、通常の木材のように日焼けして濃く変色するのではなく、むしろ退色して白くなっていくので、使用に際してはカーテン等で直射日光を遮るような注意が必要です。
以上述べてきましたように、コルクは植林木である「コルク樫」の樹皮を収穫して生産しますが、収穫から9年たつと、樹皮は羊の毛のようにまた再生します。
剥がされた樹皮からはコルクストッパーが生産され、あとの残材を再加工してコルクの建材は造られています。まさにコルク建材は地球環境にマッチしたエコロジー建材と言えます。

